フォト刺繍とは、写真をもとにした写実的な刺繍表現のことです。
通常の刺繍が文字や単純な図案を扱うのに対して、フォト刺繍は風景や人物、動物などを、まるで絵画や写真のように精緻に再現します。
目次
写真を“刺繍する”という発想
フォト刺繍は、まず写真画像を刺繍ソフトに取り込み、色や明暗をもとに専用のソフトウェアで刺繍用データに変換します。そのデータを産業用刺繍機に送信し、数万〜数十万針のステッチによって、一針ずつ縫い上げていきます。
この技術により、微妙なグラデーションや光の表現までも、糸で再現することが可能になります。
使っている機材について
私の作品では、日本のタジマ刺繍機を使用しています。
タジマは世界中の刺繍業界で信頼されているブランドで、特に精密な制御が可能な産業用機械として知られています。
その性能を活かしながら、刺繍データ編集ソフト「刺しゅうPRO」、「DG16」で1本ずつステッチ方向や重ね方を調整し、写真のように見せるための工夫を施しています。
私のフォト刺繍作成の特徴の一つは、2種類の刺繍データ作成ソフトを使っていることです。ステッチデータの作成に「刺しゅうPRO」、描画やステッチ編集に「DG16」を使用している。
アートとしてのフォト刺繍
私は2018年より、フォト刺繍を芸術表現として探求しています。
テーマは「光を糸で表現する」。
写真とは異なり、刺繍では“光そのもの”を糸の方向や密度、色で再構築する必要があります。
そのため、同じ画像でも、印刷とは全く異なる立体感とぬくもりが生まれます。
フォト刺繍がもたらす体験
- 遠くから見ると写真のように見える
- 近づくと、糸でできていると気づく
- 「刺繍でこんなことができるの?」という驚き
この驚きと感動こそが、フォト刺繍の魅力です。
作家紹介:樋口大(Dai Higuchi)
フォト刺繍クリエーター。2012年から技術研究を行い、2018年より作品を発表。
タジマ刺繍機を活用し、展覧会・アートフェア・出版などを通じてフォト刺繍の可能性を広げている。