フォト刺繍とは、写真画像をもとに、刺繍機と専用ソフトを使って再構築された刺繍作品のことを指します。
一見すると写真のように見える緻密な表現が特徴で、色彩・質感・光の表現までも糸によって再現します。
この技法は、一般的には「フォトステッチ(Photo Stitch)」と呼ばれることもあります。
実際、タジマやブラザーなど多くの刺繍機メーカーのソフトでは「Photo Stitch」という機能名で提供されています。
しかし私は、この表現に込める想いと伝わりやすさを考え、あえて“フォト刺繍”という言葉を使っています。
私にとってのフォト刺繍
私は2018年よりフォト刺繍作家としての制作活動を始めました。
もともとはタジマ刺繍機 西日本総代理店 株式会社精研の社長として、タジマ刺繍機の販売促進にまい進する一方で、フォト刺繍をはじめとする刺繍の可能性を追い続けてきました。
しかしフォト刺繍作家として活動をはじめた当初は、この表現で自分が何を伝えたいのか、何を表現していくのかに悩んでいました。
様々な作品を作りながら、ある時、「刺繍という技術を通して、光を表現できないか」と考えるようになったことで、
私にとって、表現のためのフォト刺繍の定義が明確になりました。
以降、「光を糸で表現する」というテーマのもと、写真を刺繍に変換し、作品として発表しています。
この表現は、記念品としての似顔絵刺繍や商品化されたフォトステッチとは異なり、
作品としての構成・光と影の階調・色彩の選定・ステッチ密度など、芸術的な要素を強く意識しています。
フォト刺繍の概要
フォト刺繍は、写真を元に刺繍で写実的に表現したものです。綿密に計算されて構成されたステッチに刺繍糸をグラデーションさせることで、写実的な刺繍表現が可能になります。写真を忠実に再現するだけでなく、刺繍糸独特の光沢も相まって、写真のように見えたり、絵画のように見えるのが、特徴です。
フォトステッチとの違い
フォト刺繍とフォトステッチは基本的には同じです。タジマやブラザー等のソフトでは「フォトステッチ」と機能名として使われているので、刺繍されたものもそのままフォトステッチと呼ぶ人もいます。私も以前はフォトステッチと呼んでいたのですが、刺繍機を使い刺繍糸で表現している刺繍作品なので、「フォト刺繍」と呼ぶようになりました。
制作の流れと技術的特徴
- 写真選定:構図と光(逆光・木漏れ日・リフレクション等)を重視。
- データ作成:刺しゅうProで画像をステッチへ変換。
- 手動編集:タジマDG16でステッチの編集。糸色の選択、密度・方向・重ねを微調整。
- 糸色の選択:糸色の選択、グラデーションの構築。
- 本縫い:工業用刺繍機で最終出力。
京都・八幡市の桜の名所、背割堤を写した一枚。構図、桜の色、空のグラデーション。全てが高いレベルで融合した作品。
テーマ:光を糸で表現する
私は風景や光景を光として捉えて、刺繍することを、「光を糸で表現する」という短い言葉で表現しています。私にとって、色と光は同じです。光として目の中に入ったその瞬間の光の印象を糸で表現しています。そして、その作品を初めてみる時、どの距離から見られるのかを常に考えながら糸を選んでいます。人から人へ手渡されるような作品と、美術館のように遠くから見る場合での糸による表現を変えています。近くで見るものはより繊細に、遠くらか見るものはより大胆に。近くでは刺繍のテクスチャー、離れると写真のように見えるのがフォト刺繍の大きな特徴ですが、どの距離から見られても刺繍としての美しさを損なわないような糸の流れ、糸の色合いを意識して表現しています。
よくある質問(FAQ)
Q: フォト刺繍と通常の刺繍は何が違いますか?
A: 一番大きな違いはフォト刺繍は糸のグラデーションで表現しているのに対し、通常の刺繍はサテン、タタミなど、縫いで表現します。
Q: 他の人のフォト刺繍と何が違うのですか?
A: 作品として仕上げるために手動編集を多用します。糸の色も自分で目合わせします。自動生成のみでは得られない表現があります。
Q: どのような機材を使っていますか?
A: 写真の変換にししゅうProを使い、変換されたステッチの編集はタジマDG16(2025年現在)を使用しています。刺繍機はタジマの工業用刺繍機です。PCは高性能なクリエーターモデル。モニターも色がしっかり表示できるものを使っています。
Q: 制作時間はどのくらいかかりますか?
A: サイズや内容によりますが、データ編集から糸の色選択、刺繍まで30日から90日くらいかかります。
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